町中華とは、店の数だけ正解がある料理ジャンルだ。チェーンの均質さの対極にある、鍋振り一筋50年の炒飯。今回は食べ歩き歴15年のライターが、エリアの偏りなく「その一皿のために電車に乗る価値がある」12軒を選んだ。紙幅の都合で、ここでは選定基準と象徴的な4軒を深掘りする。

選定基準は3つだけ

①名物の一皿が明確にあること。②創業20年以上、もしくはそれに匹敵する技術の蓄積があること。③一人でふらりと入れる空気であること。メディア露出の多寡は問わない。むしろ常連の昼の顔が見える店を優先した。

炒飯の聖地と餃子の老舗

北区の「光栄軒」の炒飯は、卵の火入れと米の硬さが完璧な均衡にある。ランチタイムは並ぶが回転は速い。一方、蒲田の羽根つき餃子発祥の系譜を継ぐ店では、羽根の薄さと餡の肉汁が今も基準器であり続けている。

どちらにも共通するのは「タレを使わなくても完成している」こと。卓上調味料は名店ほど出番がない。

オムライスとカツ丼を出す中華

町中華の面白さは、メニューの「境界の曖昧さ」にもある。神保町の老舗は中華鍋で作るオムライスが裏名物で、ケチャップライスの香ばしさは洋食店では出ない味だ。中華鍋の火力こそが、町中華という料理ジャンルの正体なのだと気づかされる。

  • 炒飯部門: 光栄軒(尾久)
  • 餃子部門: 你好 本店(蒲田)
  • 境界メニュー部門: 神保町の老舗中華
  • タンメン部門: 三鷹の人気店

町中華を巡るマナー

ピーク時の長居をしない、大人数で押しかけない、写真は一声かけてから。どれも当たり前のことだが、個人店の体力は有限だ。私たちが通い続けることと、静かに敬意を払うことが、この文化を10年後に残す唯一の方法だと思う。