富士山に登る計画で、許可や装備の前に意外とつまずくのが「自分の今いる場所から、結局どうやって五合目に着くのか」という移動の部分です。2026年シーズン(令和8年度)は御殿場ルートを除く全ルートで自家用車が五合目まで入れず、乗換駐車場からシャトルバスに乗り継ぐ仕組みが続きます。さらにゲートの時間規制があるため、行き方は「どの交通手段が安いか」だけでなく「何時に五合目へ着くか」まで含めて決める必要があります。この記事は出発地を起点に、東京・三島・名古屋・大阪・空港から五合目までの行き方を時刻と料金で逆引きします。登山そのものの計画は別記事に譲り、移動だけに絞ります。
出発前に押さえる3つの前提
行き方を選ぶ前に、2026年シーズンに共通する3つの条件を確認します。これを知らずに向かうと現地で予定が崩れます。
1つ目は車の扱いです。夏の開山期間中は、御殿場(Gotemba)ルートを除く吉田(Yoshida)・須走(Subashiri)・富士宮(Fujinomiya)の3口で自家用車が五合目まで入れず、ふもとの乗換駐車場(park-and-ride)に車を置いてシャトルバスに乗り継ぎます。御殿場だけは無料道路の富士山スカイラインで新五合目駐車場まで車で直行でき、唯一の例外です。マイカー規制の開始日は3口でずれていて、須走が7月1日9時、吉田が7月3日18時、富士宮が7月10日9時から(いずれも9月10日18時まで)。EV・燃料電池車・電動バイクも規制の対象です。吉田は7月3日18時に規制が始まる一方でシャトル運行開始は7月4日なので、7月3日夜から4日早朝にかけては自家用車もシャトルも使えない空白の時間が生じます。
2つ目は入山料です。2026年シーズンは全4ルートで1人1回4,000円が必要です(2025年の2,000円から引き上げられました)。山梨県の公式案内でも全ルート徴収が明記されています。支払い手順や予約の詳細は登山ガイド側で扱います。
3つ目が時間規制で、これが行き方の設計に直結します。ゲートは14時から翌3時まで閉鎖され、この時間帯に通過できるのは山小屋の宿泊予約者だけです。つまり日帰りや弾丸で登るなら、午前から昼前には五合目へ着いている必要があります。だから行き方は到着時刻から逆算する作業になり、後述する三島07:35発の便や新宿の早朝便、土日祝のシャトル始発を選ぶ判断につながります。なお開山日や規制日は残雪・天候で遅れる「予定」なので、出発直前に各事業者・自治体の公式情報で必ず再確認してください。
東京・新宿から吉田口へ — 直行バスか、富士回遊+路線バスか
首都圏から最も近いのは富士スバルライン五合目(吉田口)で、新宿起点に2つの経路があります。乗換ゼロで楽なのが高速バス直行、本数が多く融通が利くのが特急+路線バスです。
高速バス直行は、バスタ新宿(Busta Shinjuku)から富士スバルライン五合目まで乗り換えなしで約2時間25〜35分。座席予約制で、富士急バス・フジエクスプレス・京王バスの共同運行です。運行は7月1日から9月10日まで。新宿発は早朝から夕方まで複数便があり、深夜便は時期限定です。運賃は注意が必要で、2026年7月1日の改定で開山期間中は片道が値上がりします。一方で英語の予約サイトには改定前の安い価格が残っている例もあるため、本記事では片道おおむね3,800〜4,800円・7月1日に値上げの便あり・予約サイトで最新額を要確認、と幅を持たせて案内します。
もう一方は特急+路線バスです。新宿から河口湖駅(Kawaguchiko Sta.)までは全席指定の特急「富士回遊(Fuji Excursion)」が下り最速で約1時間53分、毎日4往復前後。新宿から河口湖までは乗車券と特急券で計およそ4,200円です。河口湖駅で路線バスに乗り継ぎ、五合目までは片道大人2,000円・往復大人3,400円(往復券は2日間有効)。所要は約50〜65分で予約不可の先着順です。本数が多いぶん時間の融通が利くのが利点で、最速・最楽を求めるなら直行バスという住み分けになります。なお路線バスの旧運賃(片道1,950円・往復3,000円など)は2025年の値で2026年には使えません。
三島・名古屋・関西・空港から — 富士宮口は三島乗継が定石
静岡側の玄関は東海道新幹線ひかりが停まる三島駅(Mishima Sta.)で、最寄りは富士宮口(Fujinomiya)です。三島駅南口から富士宮口五合目へは富士登山バス(富士急シティバス)が出ていて、片道大人2,840円・所要約2時間。三島駅南口07:35発が富士宮口五合目09:36着という朝の便が登山向きですが、富士宮口五合目までの直通は実質1日1往復しかなく、早朝から登るなら三島前泊が現実的です。富士宮口五合目行きは7月10日から9月10日の運行です。
往復の単券は2026年は公式が「未定」としているため、往復で使うなら3日間有効の「富士登山バス・フリーきっぷ」へ誘導されます。このきっぷの2026年価格も公式は「未定」で、2025年実績の大人4,000円を前年の参考値として見ておくのが安全です。購入は三島駅南口の窓口が基本で、2026年のオンライン販売は準備中とされています。海外から事前に買う手段が現時点で限られる点は、富士宮口側の弱点として正直に書いておきます。
名古屋・大阪など関西方面からも、新幹線ひかりで三島まで来て同じ富士登山バスに乗るのが定石で、地理的に富士宮口が最寄りです。こだましか停まらない新富士駅(Shin-Fuji)は富士宮口への直通登山バスがなくタクシー前提(料金は2025年表記で約12,900〜15,370円とされ、2026年は改定の可能性あり)で割高なので、関西からも新富士ではなく三島で乗り継ぐのが現実解です。吉田口へ向かうなら東京経由で遠回りになります。成田・羽田の各空港からは、空港発で五合目まで直行するバスは一般的ではありません。まず鉄道や空港リムジンで東京・新宿へ出て、前述の東京発ルートに合流するのが現実的です。
御殿場ルート — 唯一マイカーで新五合目まで直行できる
御殿場(Gotemba)ルートは規制3口と性格がはっきり違います。富士山スカイラインが無料道路でマイカー規制もないため、御殿場口新五合目の駐車場まで自家用車で直接乗り入れられます。乗換駐車場もシャトルも不要で、4ルート唯一「車が最も安く・速く・時刻表に縛られない」が成立します。ただし標高差が最大で最も長く山小屋も少ないため、健脚者や大砂走り下山を狙う上級者向けで、初心者がまず選ぶ第一候補にはなりにくい点は添えておきます。
公共交通で行くなら、御殿場駅(Gotemba Sta.)富士山口から富士急モビリティ(Fujikyu Mobility)のバスが出ています。予約不要でバス停に並べば乗れるのが訪日客にも扱いやすい点です。御殿場駅から御殿場口新五合目へ向かうZ系統は片道大人1,280円・往復大人2,300円・約30分で、7月10日から9月10日の運行。御殿場口新五合目方面の上りは1日5便ほどです(二次情報に異なる運賃もありますが、富士急モビリティ2026年公式時刻表の値を採用)。
同じ御殿場駅から須走口五合目へ向かうQ系統は片道大人1,780円・往復大人2,500円・約60分で、7月1日から9月10日の運行。上りが1日9便ほどあり、静岡側では最も便数が多いので訪日客には扱いやすい選択肢です。御殿場駅自体へは、新宿のバスタから小田急箱根高速バスで約1,710円、東京駅からは約1,650円、JR御殿場線でも行けます。富士急モビリティは停留所の英語名を併記した英語版の時刻表も用意していて、予約不要である旨も明記されています。
車で行くか、バスで行くか — 人数で逆転する総額
規制3口では park-and-ride が前提になるため、総額は「人数」で逆転します。吉田口を例にとると、車なら富士山パーキングが1台1回1,000円、そこにシャトル往復3,400円が人数分かかります。2人なら駐車1,000円+シャトル6,800円で7,800円、4人なら駐車1,000円+13,600円で14,600円(別途ガソリン・高速代)。一方、新宿からの直行バスは片道4,800円なら往復でおよそ9,600円が1人あたりかかります。特急+路線バスは新宿から河口湖まで約4,200円に、河口湖駅から五合目の往復3,400円を足して片道計およそ6,200円からです。
ここから導けるのは、1人なら直行バスか富士回遊+路線バスが運転も駐車も規制も気にせず楽、2〜4人なら富士山パーキングへの park-and-ride が総額で逆転して有利、という線引きです。人数が増えるほど車が割安になります。土日祝はシャトル始発が3時なので、早朝から動きたいなら直行バスより車のほうが早く動けます。
他の口も見ておくと、富士宮口は水ヶ塚公園の駐車が平日1,500円・土日祝と盆は2,000円、シャトル往復2,400円が人数分で、1人でも3,900〜4,400円ほど。三島起点のフリーきっぷ(2025年参考で4,000円)と拮抗します。須走口は乗換駐車場の料金が公式で無料・二次情報では有料と出典が割れ、年により扱いが変わる可能性があるため公式での直前確認が要りますが、規制ルートの中では唯一駐車が無料になりうる=車派に最も有利な可能性があります。早見でいえば、訪日・単独・都心発なら直行バス、家族連れや大荷物なら車(須走か御殿場)、始発前から自由に動きたいなら規制のない御殿場、という選び方になります。
訪日者のアクセス実務 — 予約・決済・荷物・最終便
海外からの訪問者がつまずきやすいのは、交通そのものより予約・決済・荷物・帰りの最終便の4点です。順に整理します。
予約の要否はルートで分かれます。要予約だが英語で手配できるのは新宿からの直行高速バス(英語サイトでクレジットカード決済可、Klookでも60日前から購入可)と、富士スバルライン五合目への往復きっぷ(英語のモバイルチケットでQR表示・カード決済可)、そして全席指定の富士回遊です。予約不要・先着順なのはふもとのシャトル各種・河口湖駅から五合目の路線バス・御殿場や須走の富士急モビリティ便で、英語時刻表にも予約不要と明記され、訪日客に最も摩擦が少ない選択肢です。一方で三島から富士宮口へのフリーきっぷは三島駅南口の窓口購入が基本で、英語のオンライン販売が準備中という弱点があります。
決済は誤解が多い部分です。ふもとのシャトル系は現金かクレジットカードのみで、Suica・PASMOやPayPayは使えません。路線バスの車内片道は現金とSuica・PASMOが使え、富士五湖や御殿場エリアの路線バスはVisa・JCB・Amexのタッチ決済にも対応します。ただし季節限定の登山バスはIC可否が案内に明記されないことがあるので、少額の現金を予備に持つと安心です。入山料窓口や駐車料金も現金前提と考えておきましょう。
荷物は軽装で五合目へ上がるのが基本です。吉田線側は河口湖駅にコインロッカー(大型対応・目安500〜600円、80cm級は別途800円程度・有人預かりもあり)があり、大きな荷物を預けてから登るのが無難です。乗換駐車場のロッカーは公式に記載がなく当てにしない方が安全です。静岡側は三島駅に改札外のコインロッカーや預かりサービスがあり、新幹線で来た訪問者は三島で大荷物を預け軽装で五合目へ向かうのが現実解です。
最後に帰りの最終便です。シャトルの下り終発は吉田が18時30分・富士宮が18時・須走が平日19時/土休日20時、三島へ下る富士登山バスは富士宮口五合目10時35分・17時20分発と限られます。下山が遅れると公共交通で詰むので、上りを決める時点で下りの終発も必ず確認を。取り残された場合は富士宮や須走の夜間シャトルタクシーが代替手段です。
入山料の予約手順や装備規制、ルート選び、弾丸登山の是非といった登山そのものの計画は本記事では深掘りしません。登山全体の計画は別記事「富士山2026 開山ガイド」に譲り、本記事は五合目までの行き方に特化しています。開山日・規制日・運賃は気象や事業者の都合で変わりうる「予定」なので、出発直前に各事業者・自治体の公式情報で最新の数字を必ず確かめてください。
