富士山の2026年シーズン(令和8年度)は、4ルートすべてで入山料1人1回4,000円が必須になり、山梨側(吉田)と静岡側(須走・御殿場・富士宮)で手続きの仕組みが分かれました。「とりあえず5合目まで車で行って登る」という以前の感覚のまま来ると、ゲートで止まります。ここでは開山日・支払い・ルート選び・弾丸登山の扱い・5合目への交通を、予約から下山までの順番で並べ直します。数字はすべて2026年シーズンの値ですが、開山日は残雪で遅れることがある「予定」なので、出発直前に各公式で再確認してください。
まず開山日を押さえる(4ルートで日付が違う)
2026年シーズンの開山日はルートごとに分かれます。山梨県側の吉田ルート(Yoshida)と静岡県側の須走ルート(Subashiri)が7月1日(水)、静岡県側の御殿場ルート(Gotemba)と富士宮ルート(Fujinomiya)が7月10日(金)です。閉山はいずれも9月10日(木)で、吉田の下山道だけは9月11日午前まで開放されます。山頂を一周するお鉢めぐり(Ohachi-meguri)は7月10日からの予定ですが、残雪の状況で前後します。
須走の7月1日は、例年の7月10日からの前倒しです。須走は八合目で吉田ルートと合流するため、下山時に間違って吉田側へ進む人が多く、整理の都合で静岡県が日程を揃えました。富士宮は「6合目以上が7月10日開山」で、5〜6合目の区間だけ6月23日から先に通れます。ここは混同しやすいので、6合目より上へ進む計画なら7月10日が基準だと考えてください。
開山「時刻」も誤解の多いところです。御殿場と富士宮は午前9時開門と公式に明記されています。一方、吉田と須走は固定の開山時刻を持たず、24時間運用のゲート方式です。「吉田は朝9時から」と書いてある古い案内を見かけますが、2026年シーズンの吉田にその表記は当てはまりません。
- 吉田 Yoshida(山梨): 7/1(水)〜9/10(木)/下山道は9/11午前まで
- 須走 Subashiri(静岡): 7/1(水)〜9/10(木)
- 御殿場 Gotemba(静岡): 7/10(金)9:00〜9/10(木)
- 富士宮 Fujinomiya(静岡): 7/10(金)9:00〜9/10(木)/5-6合目は6/23先行
- お鉢めぐり: 7/10(金)〜9/10(木) 予定・残雪次第
入山料4,000円の払い方は、山梨と静岡で別系統
2026年シーズンは4ルートすべてで入山料(通行料)が1人1回4,000円になりました。2025年の2,000円から倍に上がっています。問題は「どこで・どうやって払うか」が県で違うことです。同じ富士山でも、山梨側と静岡側で別々の仕組みを使います。
山梨側の吉田ルートは「吉田ルート通行予約システム」(運営はASOVIEW・英中韓越に対応)で事前にカードまたはPayPayで支払うのが基本です。当日は5合目の窓口でも払えますが、その場合は現金のみで、カードやPayPayは事前予約専用です。予約受付は2026年4月27日(月)13時に始まりました。予約は義務ではなく、上限に達していなければ当日の飛び込みも可能ですが、QRコードでゲートを抜けられるぶん事前予約のほうが流れは速いです。
静岡側の3ルート(須走・御殿場・富士宮)は「静岡県FUJI NAVI」というアプリ/システムを使います。こちらは手順がもう一段増えます。ルールとマナーの事前学習(eラーニング)と確認テストを終え、登山者情報を登録し、4,000円を決済して、入山証のQRコードを受け取る——ここまでが各登山口で必須です。登録開始は2026年5月8日(金)10時。決済はアプリ上(カード・電子マネー)でも、現地(現金・キャッシュレス)でも構いません。
つまり山梨側は「予約して払う」、静岡側は「学習して登録して払う」と覚えると整理しやすいです。複数ルートをまたぐ計画でも、どちらの県から入るかで使うシステムが決まります。
4ルートをどう選ぶか
ルート選びは「混雑・山小屋の多さ・標高差」で考えると外しません。吉田ルートは山小屋と救護体制が最も厚く、初めての人や訪日客が選びやすい一方で、最も混みます。御来光シーズンの週末は山頂直下で渋滞ができるほどです。空いた時間割を組みたいなら、平日泊・午後発で山小屋に1泊し、混雑の波とずらして頂上を目指すのが現実的です。
静岡側に目を向けると、富士宮ルートは5合目の標高が4ルートで最も高く、距離が短いぶん傾斜は急です。御殿場ルートは5合目が最も低く、距離も標高差も最大で、最も人が少ない上級者向け。須走ルートはその中間で、樹林帯を抜ける道のりが特徴で、下りの大砂走りが知られています。「短いが急」が富士宮、「長いが空く」が御殿場、と覚えると選びやすいでしょう。
どのルートでも共通するのは、人数規制の有無です。1日の人数上限が設けられているのは吉田だけで、1日4,000人に達するとゲートが閉まります(山小屋宿泊者は除く)。静岡側の3ルートに人数上限はありません。混雑を最優先で避けたい人にとっては、この差がルート選びの分かれ目になります。
弾丸登山は、2026は事実上できない
弾丸登山(dangan-tozan)は、山小屋に泊まらず夜通しで登って御来光を狙う登り方を指します。2026年シーズンは、これが全4ルートで実質的に止められています。共通ルールとして、14時から翌朝3時までの入山は山小屋の宿泊予約者しか認められません。山梨側は「予約者ならゲートを通過できる」、静岡側は「夜間入山は山小屋宿泊が必須」と言い回しが違いますが、結果は同じで、泊まらずに夜通し登るルートは塞がれています。
止めている理由はリスクです。睡眠を取らずに一気に高度を上げると高山病になりやすく、山頂は御来光前で約0℃まで下がるため、待つほど低体温症の危険が増します。暗い登山道では滑落や落石も見えにくく、頂上付近では渋滞も起きます。当局は山小屋で睡眠と休憩を取り、ゆとりのある計画で登ることを勧めています。高山病そのものの対策は深い話になるので本記事では触れる程度にとどめますが、「眠らずに登らない」という一点だけは守る価値があります。
規制の手応えとして、夜間登山者が約14,500人から708人へと約95%減り、救護・相談も4割減ったという数字があります。ただしこれは2024年夏(前年比)の実績で、2025年でも2026年でもありません。2026年は開山前なので実績はまだ存在しません。過去には静岡側で開山直後18日間に遭難24件・死亡4件という年もありました。これらは「過去の傾向」として読み、最新の状況は別物として備えてください。
装備の足切りも見落とせません。吉田ルートでは5合目のゲートで、防寒具・上下セパレート式の雨具・登山に適した靴の3点を携行しているかを確認され、欠けていると通過できません。ヘルメットは推奨であって必須3点には含まれませんが、落石による重大事故の歴史を考えると持っておきたい装備です。
5合目までどう行くか(夏はマイカーで登れない)
見落としやすいのが、夏のあいだは自家用車で5合目まで上がれないことです。各ルートの有料道路にマイカー規制がかかり、麓の駐車場に車を置いてシャトルバスに乗り換える「パーク&ライド」が前提になります。
吉田ルートは富士スバルラインが7月3日(金)18時から9月10日(木)18時まで規制されます。富士北麓の富士山パーキングに駐車(1台1回1,000円・24時間)し、シャトルで約45分かけて5合目へ。シャトルは往復が大人3,400円・小人1,700円(2日有効)、片道が大人2,000円で、30分間隔の運行です。公共交通なら、新宿のバスタ新宿から5合目への直行高速バスが約150分・片道およそ3,500円(要予約・季節運行)。電車派は富士回遊で新宿から河口湖駅まで行き、河口湖駅から5合目までバス約50分(往復2,300円・これはバス区間のみ)という乗り継ぎになります。
富士宮ルートは富士山スカイラインが7月10日(金)9時から規制され、水ヶ塚公園の駐車場(平日1,500円・休日2,000円)からシャトルで約35分(片道1,320円・往復2,400円)です。新幹線で来るなら三島駅から富士宮5合目への登山バスが片道大人2,840円・約2時間。須走ルートはふじあざみラインが7月1日(水)9時から規制され、須走多目的広場からシャトルに乗り換えます(片道はおよそ1,370円という情報ですが、これは二次情報なので2026年の時刻表で確認してください)。静岡側は道路自体の通行は無料で、かかるのは入山料4,000円とシャトル代だけです。
シャトルの運賃や三島からの往復料金には、まだ2026年の確定値が出そろっていないものがあります。出発前に各バス事業者の最新時刻表で運賃と運行期間を確かめておくと、現地での取りこぼしを防げます。
訪日前に潰しておく落とし穴
最後に、海外から来る人がつまずきやすい点をまとめます。どれも仕組みを知っていれば避けられるもので、知らないと現地で時間と体力を削られます。
予約と支払いは出発前に済ませておくのが安全です。山梨側か静岡側か、入る登山口で使うシステムが決まり、静岡側はeラーニングの修了まで現地でやろうとすると確実に手間取ります。装備は「ゲートで確認される3点」を軽く見ないこと。そして、5合目までは必ずシャトルになるという前提を旅程に組み込んでおくこと。これだけで当日の流れが大きく変わります。
- 弾丸登山は全4ルートで実質不可(14:00〜翌3:00の入山は山小屋宿泊者のみ)
- 吉田は完全な飛び込み自由ではない。事前予約+4,000円が推奨。ただし上限未達なら当日現金で登れる(「絶対予約必須」は言い過ぎ)
- 軽装はゲートで止まる。防寒具・上下セパレート雨具・登山靴は必携
- 夏は自家用車で5合目に行けない。麓の駐車場+シャトルが前提
- 山梨と静岡で手続きが別系統(山梨=通行予約/静岡=FUJI NAVI+eラーニング)
- 開山日は残雪で遅れる「予定」。山小屋も9/10前に閉める所が多い。出発直前に各公式で再確認を
